2023インドの旅 その3

1月24日(木)

いよいよカッチの旅本番。

前日にCALICO小林史恵さんと、MAKI TEXTILE STUDIOの田中ぱるばさんと合流した。お二人ともインドを拠点に、素晴らしい布と衣服をつくられている。このお二人と一緒に旅ができるなんて、至極ラッキーである。

今日は小林さんご案内のもと、カッチの奥地、在来種カラコットンを手紡ぎする村と、織りの村を取材する。「カラコットン」は、かつてこの地域一体で作られていた綿で、産業革命や綿花の品種改良が進むなかでも細々と栽培が続けられてきた綿の品種。この15年ほどで国内のデザイナーやNGOのサポートもあり生産が盛んになり、現在ではカッチの主力素材として知られている。

1月のインドは、朝晩は肌寒い。現地の人にとっては一番寒い時期で、ダウンジャケットを着込む人もいる。途中休憩で寄ったチャイ屋の男性もフードを被りながらチャイを淹れてくれた。

車にゆられ数時間、到着して集会所のような建物の中に入ると、そこにはボックスチャルカで糸を紡ぐご婦人集団が我々のために待機していた。10人以上の方が皆が皆負けるものかと、勢い良くチャルカを回す光景には圧倒された。なかには90歳近い方もおられた。

長いスライバーを手紡ぎする。以前は殻など夾雑物が多く混入し、チクチクするという難点があったが、最近は品質が向上してきている。

ワルダと書かれた銘板がついていることから、ガンディーアシュラムから流れてきたチャルカと思われる。ボックスタイプと、上の写真のようにボディがむき出しのものの2種類を使用していた。

この施設以外には、アンバーチャルカという、リング紡績機を簡略化・手動化したものでも糸紡ぎをしていた。こちらはより細い糸ができる。

おだやかな村という感じで、家々のつくりも素朴で美しい。

道端には牛糞を固めて干してあった。

一通り見学させてもらい、出発。お昼ご飯は途中の食堂で、コットのようなものの上に座っていただいく。じゃがいものカレーと、豆のスープと、しょっぱいスープ。

しばらくして織の村へ到着した。雰囲気としては午前中の糸紡ぎの村より少し職人気質な空気がする。建物の2階、半屋外のような気持ちの良い場所で作業が行われている。手織の風景がこんな日常的な風景として見られることに感動である。

バッタンを使用しての織り。チャルカで紡がれたカーラコットンを平織で織っている。

別の機では、ちょうど織り終わった経糸に次の経糸が捩り込まれていた。日本の機屋と同じ光景である。

経糸はビームには巻かれず、上の写真のように棒を使いながら一つの糸束になり、柱から引っ張る。

整経は糊付けをしながら行うことができる画期的な道具を使っていた。

手紡ぎ手織が地域のコミュニティーの中で無理なく行われていることは素晴らしいことだと感じた。しかしこれは伝統が自然に続いてきた訳ではなく、志のある職人や現地のNGOの並々ならぬ努力の賜物だということを、旅を進めるごとに実感することになる。

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